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​偏見のない社会を目指して

 今回はキャンサーペアレンツの会員でありながら、茨城がん体験談スピーカーバンクの代表を務めていらっしゃいます、志賀俊彦さんにお話をうかがいました。

 

 

 

 

【プロフィール】

お名前) 志賀俊彦

ご職業) 会社員

ご家族) 奥さんと中1の女の子と小2の男の子

現在のご病気の病状とステージ) 現在は寛解状態で、経過観察中

―キャンサーペアレンツで活動しようと思ったきっかけを教えてください。

2016年の夏に雑誌に掲載されていたキャンサーペアレンツ創設者の西口さんの記事をコンビニで読んだのがきっかけです。西口さんは私なんかよりも症状が重い方だったのにも関わらず、闘病しながら、働きながら活動をなさっていて、刺激を受けました。私自身、2001年より病気を患っており、そういった活動に意欲はあったものの仕事などもあり、気持ちに蓋をしていたので、すごい活動をなされている方だなと思ったのが記憶に強く残っています。

 

―実際のサポートで嬉しかったことはありますか?

 

家族、特に私の母が毎日来てくれました。病院食だけでは足りず、医師からも治療での体重減少を抑えるためになんでも食べていいといわれていたので、お弁当を持ってきてもらっていたんですよ。するとある日、ニンニク漬けの焼肉を持ってきてくれたので、病室で開けたら匂いで大惨事になりまして、看護師さんにご指導いただいたことがあります。やはり自分の場合入院したのは25歳の時で、同じ病室の人はお年寄りの方々ばかりだったので、会話も難しかったんです。会社の同僚や友達、家族誰でもいいので話をすると嫌な気分がまぎれることもあると思いますね。

 

―お子さんへのご病気の説明をされたことはありますか?

長女は小1の時に詳しく話を聞きたいということだったので全部詳しく話しました。

長男は特に聞きたいという傾向が見られないので話していません。

 

―お子さんの不安とどのように接してきましたか?

 

最初に聞いたときはやはりショックだったみたいですね。まず、死ぬのか死なないのか。を聞かれました。けれど、今の自分の姿を見てすぐに死ぬというのではないと理解できたようです。ただ、人間なのでいつ何があってもおかしくないという話はしました。

 

―お子さんを患者の会に参加させているとのことですが、そこでどのようなことを感じてもらいたいですか?

 

キャンサーペアレンツの場合は親が病気の人が多いので、まだ子供が小さかったり、面倒見る人がいなかったりすることもあり、子供がイベントに来ることが多いんです。

私の場合は娘からの希望もありました。もし関心がない様であれば、無理に連れて行くことはないんですが、なかなか知り合う機会のない人と知り合えるので、良い社会勉強にもなると思い、もし興味があるのであれば参加させたいなと思って娘には声をかけています

 

イベントでは、娘を見ていると結構楽しそうです。

参加者の方が病気であることはわかっていても、それぞれの深刻な病状まではわからないので、後から私が伝えて病気であると知るんです娘にとっては、実際に自分の目でみて、がんになってもこんな活動できるんだとか、普通に生活できるんだとか感じて体験し、確認できることはとてもいい社会勉強になっているのではないかと考えています。

 

―あなたにとってキャンサーペアレンツはどのような場所ですか?

 

人生を変えた、運命の出会いでした。いままで仕事を優先してきていましたが、キャンサーペアレンツに入ったことで、仲間ができ、人とのつながりもうまれました。今、茨城で患者団体をやってるのもこれがきっかけです。人生においてもとても大事な出会いだったなと思います。

 

―同じがん患者さんと接していくなかで、新しい発見や考え方の変化はありましたか?

 

自分の中の物事の優先順位が再確認できました。どうしても普段の生活だと、「仕事が忙しいから」と思っていましたが、生きることが大切だなと感じ、自分のやりたいことを優先したいとの気持ちを改めて感じることができました。

 

―茨城がん体験談スピーカーバンクについて詳細をお聞かせいただけますか?

 

初めは別の患者会があり、そこではお年寄りも多く、そこでは自分の経験をサロンのように話すのがメインでした。しかし、この中でも自分たちのがんになった経験を内部ではなく、外部に発信することが大切だと考えた人たちにより立ち上げられました。

 

―外向けの発信をしているとのことですが、社会への不満はありますか?

 

社会への不満というような大それたものではないですが、ただやはり偏見は多いと感じます。今の時代は多少は変わってきたましたが、まだまだ偏見は残っている印象を受けます

例えば仕事の面ですとか、病気をすると仕事出来ないだろ、みたいな偏見ですね。私が経験したわけではないですが、自分がやりたいプロジェクトから外されたり、ひどい話ですと、クビになったり、正社員じゃなくなったり、など雇用に関わる事態もきいたことがあります。経営者側のがんに対する知識や理解が乏しいことによると思うので、将来的に病気や障害を持っても生きやすい社会になってほしいと思います

 

―これまで茨城がん体験談スピーカーバンクでの活動では小学校に行くことが多いようですね。

 

茨城はがん教育実施率全国1位なんですよ。また、今年度から小学校でもがん教育が必修になったこともあり、小学校からのお話は多くいただいてます。全国的な小学校でのがん教育必修化については、小児がんについての教育が子供たちへ与える影響はどうなのか、そのような病気をもっている子供への配慮は行き届いているか、など議論になるポイントも多く、大人が懸念している一方で、そういう講演をしているときの子供の反応は結構よく、大人よりも偏見なく、吸収がはやいです

 

―最後に医療従事者や医療系学生に望むことはございますか?

 

コミュニケーションは一番大事だと思います。インフォームドコンセントを遵守するにあたって患者と医療者がわかり合えないという話がよく出ますが、実際のところ医師や看護師であったり、その他の放射線技師や理学療法士であったりといった、医療者同士のコミュニケーションの方が大事ではないかと思うんです。やはりチームで医療はやっていかなくてはならないので、医療従事者の皆さんのコミュニケーションが患者さんの病気に立ち向かって行く上で大切なのではないでしょうか。

私の場合は、主治医の先生に聞いていた内容を、放射線技師の方や別の科の先生に話を聞いたりしていたので、特に苦労した点はなかったです。しかし、いろいろ他の方の話を聞いていると、苦労されているとの声をよく聞きます。患者さんによっては、自分が発言することで治療に支障が出るのではと思ってなかなか言い出せない方もいると思うので、情報を共有できるようにできるといいですね。

―学生に向けたメッセージがあればお願いいたします。

 

自分が病気したのが大学出てから2年目くらい、なので1日を悔いなく生きてください
 

〈お話を伺って〉

 志賀さんは、私たちの質問に1つ1つ丁寧に答えてくださいました。

 入院時のエピソードなどでお腹を抱えて笑うなど非常に和やかなインタビューでした。

 志賀さんは、キャンサーペアレンツだけでなく、茨城がん体験談スピーカーバンクの代表としても活動されており、その活動量に驚かされました。そんな幅広く活動されている志賀さんだからこそわかる、現在でも偏見が多いという事実はとても印象的でした。

 今すぐに偏見をなくすことは難しいと思いますが、志賀さんが小学校で講演されているように、私たちにできることをこれからひとつずつ見つけ、実行に移していきたいと思います。

 貴重なお話をありがとうございました。

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